特許庁の最終判断:商標審決 第57回

今日は、商標審決を取り上げてみようと思います。
具体的には、「KES」の文字からなる商標を出願したところ、審査段階では京都府京都市右京区西京極豆田町2番地 京都工業会館内所在の特定非営利活動法人KES環境機構が役務『企業等の環境マネージメントシステムの団体規格への適合性についての審査・登録・認証,環境マネージメントシステムの構築に関する調査・分析・診断・指導及びこれらに関する情報の提供』について使用し、本願商標の登録出願前より取引者、需要者の間に広く認識されている商標「KES」と同一又は類似であり、かつ、前記役務と同一又は類似の役務に使用する商標であることを理由に拒絶査定がなされ、その拒絶査定に対する審判が請求された事案です。

1 商標法第4条第1項第10号について
商標法第4条第1項第10号において、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」は、商標登録を受けることができない旨規定している。 
2 引用商標の周知性について
引用商標「KES」は、「特定非営利活動法人KES環境機構」の前身「京のアジェンダフォーラム・KES認証事業部」が、2001年に創設した環境保全のための認証制度「京都・環境マネジメントシステム・スタンダード」(略称KES)において発行する登録証に使用するものである。
すなわち、「京都・環境マネジメントシステム・スタンダード」は、前記者が、環境保全に関する独自基準を設け、事業者等の申請により、その事業者等の環境への負荷の改善等の達成度を審査し、その基準に適合した事業者等を認証し、登録証を発行する制度であり、その登録証に「KES」の標章を使用しているものである。
そして、「KES」の登録事業者数は、本願の出願日前までに、1500を超え、平成21年10月末までに3000を超えているものである。
さらに、その登録事業者は、全国に及んでいるものである。
してみると、「KES」の標章は、本願商標の出願日前から、「特定非営利活動法人KES環境機構」あるいはその前身である「京のアジェンダフォーラム・KES認証事業部」の使用する標章として取引者、需要者の間に広く認識されているものと認められるものである。
3 本願商標の商標法第4条第1項第10号の該当性について
(1)本願商標と引用商標との同一性又は類似性について
本願商標は、「KES」の文字からなり、その構成文字から「ケーイーエス」の称呼を生ずるものである。
他方、引用商標は、「KES」の文字からなり、「ケーイーエス」の称呼を生ずるものである。
してみれば、本願商標と引用商標とは、文字の綴りを同じくするものであるから、外観上類似し、「ケーイーエス」の称呼を共通にするものである。
よって、本願商標と引用商標は、類似の商標である。
(2)本願商標の指定役務と引用商標に係る役務が同一性または類似性について
本願商標の指定役務は、「建築又は都市計画に関する研究」及び「環境及び環境問題に関する調査・研究又は情報の提供」であるところ、その内容は、「建築又は都市計画についての依頼に基づき、専門的知識を活用して、試験、検査又は研究を行うこと」及び「環境及び環境問題に関する依頼に基づき、専門的知識を活用して、調査・研究を行い、かつ、それに関する情報の提供」を行う役務である。
他方、引用商標に係る役務は、「企業等の環境マネージメントに関し、基準を設定し、その基準に適合した企業等の団体に対し、基準適合の証である、登録証を発行すること」及び「その基準に適合するためには、どのような環境に関する対応を講じればよいのか等について、分析・指導を行い、かつ、それに関する情報の提供」を行う役務である。
そこで、本願商標の指定役務と引用商標に係る役務を比較すると、引用商標に係る役務は、「KES」の標章を付した登録証を得たいとする取引者・需要者による申請について、それが基準に適合するか否かを審査し、適合した場合に登録証を発行することが主な目的であるのに対し、本願商標の指定役務は、専門的知識を有する者による建築・環境等の研究が主な目的であることからすれば、提供の手段や目的、需要者の範囲が相違するものである。
また、本願商標の指定役務が、試験研究機関等が役務提供者であるに対し、引用商標に係る役務は、公共機関、あるいはそれに準ずる機関が役務提供者であることからすると、その業種が相違し、同一の事業者が提供するものとはいえないものである。
(3)小括
してみれば、本願商標と引用商標とは、類似の商標であるとしても、本願商標の指定役務と引用商標に係る役務は、同一又は類似する役務とはいえないものと判断するのが相当である。
4 まとめ
したがって、本願商標が商標法第4条第1項第10号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取り消しを免れない。

出願商標の指定役務と引用商標の役務を具体的に分析して類似しないと判断した画期的な審決かもしれませんね。それではまた次回。

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